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 「一度出会ったら、人は人をうしなわない」

 わたしがとても救われたことば。大好きな江國香織の「神様のボート」の中の一説だ。旅の間、涼むために入ったタイ・バンコクの紀伊国屋の本屋で、夢中でこの本を立ち読みしていて、このフレーズを読んだ瞬間、こころの傷がすーって癒されていくのがわかった。

 人が人を失うということ。つまり、記憶から忘れ去られてしまうこと。なかったことになってしまうこと。世の中でこわいこと悲しいことはたくさんあるけれど、わたしが特におそれてることの一つが、自分が忘れ去られて、なかったことになってしまうことだ。そして、その恐怖を、静かに和らげてくれたのが、このことばだった。なんだか、色んな思いがこみ上げてきて、このフレーズを読んだあとはしばらくぼんやりしてしまった。わたしの旅ノートには、そのことばが走り書きされていた。このことばに出会えたことがよっぽどうれしかったんだと思う。

 わたしは、卒業アルバムを6冊持っている。幼稚園1冊。小学校2冊。中学校2冊。高校1冊。でも、小学校の1冊と中学校の1冊には、わたしの個人写真がない。途中で引っ越したからだ。小学校6年の5月。中学校2年の夏。個人写真の写っていないわたしは、みんなの心にどれくらい残っているだろうか?まったく消えてしまってるのかな。わたしは確かにいたのに。そこで生活していたのに。集合写真や、スナップ写真で写っているわたしを見つけるとちょっと安心する。でも、その数はとても限られていて、わたしでさえ見つけるのが大変なのにみんなは気づいてくれるのだろうか。

 転校生というのは悲しいもので(わたしだけかもしれないけど)、普通に生活している人より、思い出というものを、宝石箱に宝石を入れように、すごく大切にする癖がある。新しい学校でなじめなくてさみしい間、その宝箱をそっとのぞいて、自分がしあわせだったこと、そして、そのしあわせがここでもやってくるだろうことを思い込むため。そして、強くなるため。特に、中学校の転校のときはそうだった。

 ここで、人に初めて告白するけど、中学で転校したばかりの時、転校生のわたしは部活でいやがらせを受けていた。明るいのが取り柄で、友だちと騒いでいるのが大好きで、学級委員とかを引き受けたりして、それでもって負けず嫌いだったわたしには、それがほんとにほんとに屈辱だった。ひとりで必死に戦っていた。負けるのはいやだったから。負けたらそれは「いじめ」というものになるんだろうと思った。自分がいじめを受けているなんて考えるだけで、吐き気がした。だから、毎日が戦いだった。

 そんなとき、よく前の学校を思った。ほんとに楽しかった。あそこには友だちがいる。仲間がいっぱいいる。だからわたしは大丈夫。頑張らなきゃ。

 でも、時々すごくこわくなるのだ。みんながわたしを忘れていたら、そしたらわたしはどうなるのだろう。そう考えて、よく夜泣いた気がする。

 そんな戦いもすぐおさまって、わたしはここにもなじんだけど(前の学校のように完璧にはなじめなかったけど)、でも、やっぱり人から忘れ去られる恐怖はずっと持ち続けていた。わたしだけ一方的に覚えているなんてそんな悲しいことはない。それなら、両方忘れてしまったほうがまだましじゃないか。でも、わすれられないのだ。

 恋もそうだ。あんなにすきだったのに、いつのまにか終わってしまった。ほんとにすきだったのに。わたしだけ、あのときの気持ちを覚えていて、あの人はわたしをすきだった気持ちは忘れてしまうんじゃないか。そしたら、あの期間はなんだったんだろう?わたしの気持ちはどこにいけばいいんだろう。でも、わたしにとっては大切な思い出だと思う。それが悲しい。すごく悲しい。

 
 そんな気持ちをすーっと取り去って、わたしのこころを包んでくれたこのことば。今日バイト中にこの本を改めて読んでいて、このフレーズを見つけたら、初めて出会ったときと同じようにこころが洗われた。

 そして、もうひとつのことばを思い出した。

 「5年ぶりに会ったのに、昨日別れたばっかくらいの勢いだな。」

 成人式のときに帰った仙台で友達がさりげなく言ってくれたことばだ。やっぱりわたしは、成人式は今の中学じゃなく、前の中学のみんなに会いたくて、みんながどんな反応してくれるのかすごく怖かったけど、でも、わたしはすてきなことばに出会った。だいじょうぶ。そのことばを飲み込んで、仙台に行ったのだ。そしたら、友だちが笑いながらこう言った。

 人っていいなぁ。こうゆうのを幸せっていうんだなぁと思った。そして、やっぱり人は人をうしなわないんだって、強く実感した。ほんとに強く。だから、もうそんな恐怖は感じなくていいんだって。

 それで、わたしは前よりちょっと強くなれた。そして、このことばをかみしめると自分が少しやさしくなれる気もする。

 
 一度出会ったら、人は人をうしなわない





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