個室から大きい病室に引っ越した。
病室は5人部屋。
ドアを入って、右側にふたつ、
左側にみっつベッドがある。
右側の窓側がわたしで、
となりの廊下側は陽気なおばちゃん。
いつも明るくて、
毎朝冷たい給水器の水を、病室のみんなの分、
空のペットボトルに入れてきてくれる。
病室には、いつもおばちゃんの元気な声が響いている。
左側の窓側、つまりわたしの向かい側は
明るいおねえさん。
確実に年齢より10歳は若く見える。
大変な病気なのに、いつもやさしい。
何回も入退院を繰り返しているから、
病院のことにやたら詳しいけど、
全然病の気配を感じさせない。
そのとなりはひとつ空いていて、
廊下側のベッドに、かわいいおばあちゃん。
やさしくて、話好きで、
前はヨン様が好きだったけど、
今はタッキーに夢中だそうだ。
いつもかわいい服を着て、
ベッドにきれいに花を活けている。
5Fの一番奥の病室で、
この明るい3人に囲まれているから、
わたしは入院生活を乗り越えてこれたように思う。
他の病室では、
常にベッドのまわりのカーテンを閉め切っているところが多いけど、
わたし達は、お見舞いの人が来てくれているときや寝るとき以外は、
(特にごはんを食べるときなんかは絶対に)
カーテンをオープンにして、
話しながら、ゆっくりごはんを食べる。
そんなときのごはんはとても美味しい。
たまには、ごはんですよやふりかけや
お見舞いにもらったフルーツなんかも回ってくる。
いつもリハビリから「疲れた〜!」と
ぶうぶう言いながら帰ってくるわたしを
「おかえり〜」と明るく迎えてくれる。
たまには、
「文句言っちゃだめよ。
若いから絶対によくなるんだから。」
とたしなめてくれたりもする。
そうかと思えば、
「かっこいい先生いないの?
お金持ってるからいいんじゃない?」
なんて、よくわからない話から、
セレブと結婚する方法について話が脱線したりもする。
そんなおだやかな時間はいつも、
自分が病気だったことを忘れさせてくれた。
向かいのおねえさんのだんなさんが
わたしのために大量に持ってきてくれたDVDの中に、
「救命病棟24時」があった。
その中で、江口洋介が言っていた。
『解決してくれるのは時間じゃない。
その時間に誰かと話して、何かを感じた。
だから、俺はここにいられる。
閉じこもってないで、外に出てみたらどうだ。』
本当にそのとおりだと思う。
人は、いつも人に救われる。
みんな元気にしているだろうか。
元気だといいな。