no rain, no rainbow
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違和感。
脊髄腫瘍になってから、
他人との間に距離感を感じるようになった。

「元気じゃん」と言われるたびに、
ざらざらした、明らかな違和感が押し寄せる。

彼らが本当に心配してくれていただろうことはよくわかる。
その気持ちはほんとにうれしかったし、
そうゆう応援に何度救われたかわからない。
心底感謝している。

でも、見た目が元気になると同時に、
見えない麻痺や痺れや痛みが、
どんどん他人との壁を厚くする。
痛いのに。
痺れてるのに。
動きづらいのに。
なんでわかってくれないんだろう。
ハンディが残っているのに、
それを理解してもらえない。
同情してほしいわけじゃない。
ただ、わかってくれればいいのに。

苦しかった。

それなら、もっとわかりやすく
大きなハンディが残った方がよかったなんて
本当に馬鹿なことを考えたこともある。

でも、病気と向き合った時間と比例して、
すごく大きな大前提に気づき始めた。

「自分と他人は圧倒的に違うこと。」

それはネガティブな意味ではない。

他人の苦しみを、悲しみを、喜びを、怒りを、
100%完璧にわかることなど絶対に不可能なのだ。

だからこそ、人は孤独を感じる。

でも、だからこそ、人は「分かり合いたい」と
思うのだろう。

そして、大事なことは、
わたし達は、たった一部でも、ほんの一瞬でも、
同じ想いを共感・共有できるときの
大きな大きな幸せを知っている。




ずっと見たかった「BABEL」を見た。
イニャリトゥ監督は「アモーレ・スペロス」「21g」ともに
大好きな監督だ。
彼が生まれ育ったメキシコを、
わたしもとても好きだという単純な理由だけではない。

彼の映画は、いつもとても秀逸だと思う。
彼は、映画の持つ力をよくわかっていて、
それを最大限に利用して、
とても大きなテーマを“表現”している。



ある友だちが卒論で、
写真は“点”で、映画は“線”だという論を展開していた。
映画のできた歴史から考えても、
映画が持つストーリー性からみても、
それは明らかだろう。

イニャリトゥ監督の映画を見ると、
その映画の力がよくわかる。



時間軸・空間軸を微妙にずらしながら、
複雑なストーリーを絶妙に展開していく。
そして、圧倒的な個性を持った映像と音楽の力。

そして、何よりタイトルに象徴されるような大きなテーマを
作品の主軸に選んでいることに、
映画の力を理解していることがよくわかる。



この映画の宣伝で流れる文章を引用する。

『神よ、これが天罰か。
 言葉が通じない。心も伝わらない。想いはどこにも届かない。
 かつて神の怒りに触れ、言葉を分かたれた人間たち。
 我々バベルの末裔は、永遠にわかり合う事ができないのか?
 モロッコの片隅で偶然放たれた一発の銃弾が
 アメリカ、メキシコ、日本の孤独な魂をつなぎ合わせてゆく。
 耳を澄ませば聞こえてくるはずだ。
 初めて世界に響く、魂の声が。
 2007年、世界はまだ変えられる。』




彼は作品の中で、無駄な“ことば”を使わない。

菊地凛子が演じる聾唖の女子高生チエコが、
理解してほしいと求めた刑事に渡した手紙の内容が
観客に示されなかったことが、
それをよく象徴していると思う。

旧約聖書にあるように、
人間は神に“ことば”を乱されたのかもしれない。

“ことば”は、人と人がわかり合うのに必要不可欠だ。

でも、逆に“ことば”が人と人がわかり合うことを邪魔することもある。

あえて、必要以上に“ことば”を見せないことで、
観客に考えさせる。
イニャリトゥ監督の作品は、そんな作品だ。

映画には、色々な種類があって、
ハリウッド映画のように、エンタテイメントとして、
観客を楽しませたり、興奮することを目的としていたり、
泣かせることを目的としていたりする作品もある。
そして、そんな作品には、明確にメッセージや答えがある。
観客はそれに納得したつもりになって、すっきりして帰る。

でも、イニャリトゥ監督の作品はそうではない。
感じさせる。考えさせる。

「BABEL」のラストシーンには、かすかな希望があるけれど、
そこから何を感じるかは、観客に任せている。

それが、本当の映画だ、とわたしは思う。

そして、もっとわたしたちは
“考えなければいけない”のではないか、とも思う。

差し出された答えに納得していただけでは、
本当の孤独は埋まらない。
答えを提示されることに慣れてしまうのは、
とても危険だ。

なぜなら、
自分と他人は、圧倒的に違うから。

でも、分かり合いたい。共感したい。

そして、わたしたちは
違いを乗り越えて分かり合えたときの
大きな喜びを知っている。



こうして、このタイミングで、
この映画に出会えたことを
とても、幸せだと思う。

そして、やっぱり思ったこと。

わたしもいつか映画が撮りたい。

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Comment








asukaさんがブログに復帰されて、ホッとしております。
あまり無理をなさらずに、お体を大切にしてくださいね。

from. やまたか | 2007/05/31 23:58 |
>やまたかさん
コメントありがとうございます◎
過信しすぎず、甘やかせ過ぎず、
マイペースにがんばっていこうと思います。
ところで、やまたかさんどなたでしょう?面識ある方でしょうか?
(ほんと失礼な質問でごめんなさい。)
とにかくうれしかったです!
from. asuka | 2007/06/02 01:32 |
>asukaさん
僕は、asukaさんの繊細で、どことなく儚さの漂うブログが
好きな読者のうちの一人であり、asukaさんとは面識はありません。

ブログの更新がしばらく無かったので、もしかしたら、asukaさんのカラダに良くないことでも起きたのかなあ…と心配していただけに、今回の復帰は本当に嬉しかったです(TT)

これからも、ブログ楽しみにしてます!
from. やまたか | 2007/06/02 21:33 |
>やまたかさん
そう言ってもらえると、とてもうれしいです。
最初は、日々感じた色んなことを忘れないようにしようと思って
気ままに書き始めたこのBLOGですが、
そういうふうに読んでくれてる方がいるのだと思うと、
ほんとに救われます。
からだの心配までして頂いて、ありがとうございました!
これからもマイペースに書いてゆくつもりですので、
どうぞよろしくおねがいします◎
from. asuka | 2007/06/04 23:03 |
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