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no rain, no rainbow

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ICUを出て移されたのは、
元いた5人部屋ではなく個室だった。

そのことが、自分のからだが壊れてしまった事実を思わせて
気分がいっそう暗くなる。

個室の夜は怖い。
そして、暗い。真っ暗闇だ。
なんで、こんなに暗いのだろう。

そして、動けないということが、
こんなにも恐ろしいとは思わなかった。

左半身の麻痺と聞いて、
利き腕の方じゃなくてよかったね、
と思う人は多いかもしれない。
でも、そうじゃなかった。

「普通」ってなんて残酷な言葉だろうとふと思う。

今までわたしがいたところ、
わたしができていたことが普通なら、
明らかに今のわたしは普通じゃない。
そしたら、今のわたしは何なのだろうか。

夜のどが渇いても、ペットボトルに手が届かない。
音楽が聞きたくても、i-podに手が届かない。
そちらに首さえ向けられないのだ。
本当に何もできない。

決定的なのは、トイレだ。
トイレに行きたくても、一人で行けない。

ナースコールを呼ぶ。
車椅子を持ってきてもらう。
ベッドから車椅子に乗せてもらう。
車椅子を押してもらう。
トイレのドアを開けてもらう。
便器まで移動させてもらう。
スウェットをおろしてもらう。
スウェットをあげてもらう。
車椅子に乗せてもらう。
車椅子を押してもらう。
ベッドに乗せてもらう。

屈辱以外の何者でもなかった。

自分でトイレもいけない、こんなわたしで
生きている意味があるのだろうか。

人生というものは、
案外あっさり壊れてしまうものなんだ。
真っ暗闇の中で心底そう思った。

痛い。
動きたい。
水が飲みたい。
元に戻りたい。

右手に握っている
ナースコールの装置だけが
わたしを世界とつなげている。
これがなかったら
本当に何もできない。

薄い眠りの中で
とにかくナースコールだけを
常に探す自分がいた。

ふと目が覚めて
手元にナースコールがないときのあの恐怖。

そんなときに隣の個室が
騒々しいことに気がついた。

もう夜中なのに、具合でも悪いんだろうか?

耳を澄まして背筋が凍った。

「夜分遅くに申し訳ありません。
 ●●がたった今、息を引き取りました。
 葬儀など詳しいことはまたご連絡いたします。」
隣の病室の人は電話をかけているのだ。
何人も、何人も。

本当に死と隣り合わせなんだ。

わたし、まだ死にたくない。

こんなからだでは生きたくないという思いと、
まだ生きたいという思いが、
両方とても強い気持ちでせめぎ合って、
個室初めての夜はまったく眠れなかった。

真っ暗な闇が
からだに染み渡っていくような気がした。





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