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no rain, no rainbow

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朦朧とする意識の中、ベッドの揺れによる痛みだけが
ものすごい苦痛となって全身の神経を刺激する。

わたしは手術室からICUに移されようとしていた。
9時に手術室に入ってから、
手術は10時間ほどかかったそうだ。

痛い。痛い。痛い。
そんなに早くベッドを動かさないで。

ぼやけた視界に先生や家族、親戚の見下ろす顔が入ってきた。

「手術は成功です!」
「やったね、明日香!」
「がんばった!」
頭上から声が降ってくる。

わたしは叫びたかった。
「違う!成功じゃない!」

だって、左半分がまったく動かない。

全神経を集中して、左手と左足を上げようとする。

びくともしない、左半身には
点滴やらチューブやらに繋がれているようだ。
でも、感覚がない。
左半身が痺れていて、ひどく重たい。

鼻と口につけられたマスクのせいか
覚めきっていない麻酔のせいか
声が出せない。

「違う!違う!動かない!」

声にならない声が
わたしの体の中でこだまして、
さらに左半身を固めていくような気がする。

ものすごい絶望感。
そして、恐怖が襲ってくる。

こんなことなら、麻酔からずっと覚めたくなかった。

厚いフィルターに覆われて、目の前に人がいるのに
自分だけ完全に隔離されたような気がした。

よくドラマや漫画にあるように、
死んだ後に、自分の遺体や家族を頭上から眺めているような…
そんな不思議な感覚。

あとで入院中に読んだ藤原新也の「黄泉の犬」に、
こんな言葉があった。

「ヒトってのは自分だけで自分の存在を確認できるものじゃない。
 外との関係ではじめて自分を確認し、
 生きてるっていう実感を持つ生き物だ」


それを読んだとき、
このとき、わたしは周りをまったく意識できなかったから
自分が死んだような感覚に陥ったんだと思った。

ものすごい激痛と、左半身の麻痺が
わたしの意識のすべてで
それ以外はまったく考えられなかった。

恐怖や絶望は、ときにフィルターになって、
自分と世界を遮断する。
あんな感覚、もう二度と味わいたくない。





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