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 「リリイ・シュシュのすべて」を久しぶりに見た。岩井俊二の作品はすごく好きなものとあんまり好きじゃないものと2種類あって、わたしが好きなのは、「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」、「PiCNiC」、「スワロウテイル」、そしてこの「リリイ・シュシュのすべて」だ。この4本はたまに無性に見たくなってしまう。



 わたしが惹かれるのは、この作品の中にある“混沌”。残酷さと美しさ。繊細さと大胆さ。強さと儚さ。色んな要素が散りばめられてるのに、一本の作品の中に彼の世界がちゃんと確立されてる。そこがすばらしいと思う。そして、その世界観がわたしはなぜか好き。混沌を透明な何かで包んで、わたし達に触れやすくしてくれているような。


 “混沌”という言葉からわたしがまず思い出すのは、マニラに行ったときのこと。

 わたし達が泊まってたゲストハウス(安宿)に帰るために大通りを曲がったら、通りを一本間違えた。ゲストハウスがある通りは、他にも何件かゲストハウスが並んでたり、スタバがあったり、レストランがあったり、ゴーゴーバーがあったりして、タクシーなんかもいっぱい走っていてにぎやか。でも、間違って入ったその通りを見た時はショックを受けた。瓦礫で建てたような家々。汚れた服を着て遊んでいる裸足の子供たち。仕事がないのかふらふらしているおじさん。夜中に通ったら絶対危険だということを肌でぴりぴり感じるような通りだった。昼間でも怖くて、早足で歩いた。一本隔てただけで、こんなにも生活が違うという衝撃。

 騙されて連れて行かれた中国人墓地でもその衝撃を味わった。中国人墓地には、1軒の家のような豪華なお墓が並んでいて、お墓とお墓の間の道路も整備されている。中国人は休日になるとこのお墓でパーティーをするらしい。1つの墓室の中には、ミイラが入っているような大きな棺と、大統領のような肖像画と、きれいな花の山と、洗面所や台所までもがある。そして、その墓地は何本もの通りに並んでいて、ひとつの集落みたいになっている。そして、その豪華な集落の隣には、スラム街があるのだ。このお墓の何十倍、いや何百倍も汚い、すぐ壊れてしまいそうな家々。このお墓でパーティーをする彼らは、このスラム街を見て何も感じないのだろうか?スラム街の彼らは、この墓地をどう思っているのだろう?

 マニラだけじゃなく、この世界全部を上から見たら、きっとこんな風に混沌としているのだろうと思う。高級なブランド品を買って喜んでいる豊かな国の隣で、飢えに苦しんでいる貧しい国がある。花火を見て「きれい」と喜んでいる国の隣で、空から落ちてくる爆弾におびえている国がある。


 こないだ読んだ「放熱の行方」(吉岡忍著)の一説を思い出した。

 『それは、他者や異物を寄せつけない世界だった。私たちの外側に、まったく別の歴史的文脈で生き、ちがった論理と倫理で生きる人々がいること、その彼や彼女たちが安い賃金で働いた結果が、私たちの身のまわりの快適さや気持ちよさを支えているかもしれないことに、私たちの思いは及んでいなかった。』

 世界は“混沌”で溢れてると思う。でも、それに目を向けるのは痛いし、つらい。幸運な事に、わたしたちは、それらに目を向けなくても、普通に生きて、死ぬことができるところに住んでる。


 話は逸れてしまったけど、岩井俊二がこの「リリイ・シュシュのすべて」の中で描いた中学生の生きる世界もこんな世界なんじゃないかと思う。この映画の「14歳のリアル」ってコピーは、こんな意味を持ってるんじゃないかって感じた。

 自分の無力さがだんだん分かってきて、子供の頃持っていた夢が現実とはすごく遠いところにあるって気づき始める。行き場のない閉塞感。焦燥感。絶望感。そんな中で繰り返される、いじめ、万引き、援助交際、レイプ…。そして、そんな残虐な場面を描きながら、同時に、沖縄の自然を描いたり、ドビュッシーの音楽を流したり、田舎の美しい景色を描く。この映画はまさに“混沌”を鮮明に描き出していると思う。残酷さと美しさ。繊細さと大胆さ。強さと儚さ。どれも全て表裏一体なのだと感じた。

 自殺する直前に女の子が見た、カイトが飛ぶ空があんなにもきれいなのはなんでだろう。
 「カイトになりたい。空飛びたい。」
 そう言って、彼女は飛び降りた。 

 なんだか書いてて、また痛くなってきた。


 すごく痛くなるのに、なんでか何度も見てしまう映画だ。きっと、世界が“混沌”で溢れていることを忘れちゃだめだって無意識にどっかで感じてるのかもしれない。そして、その事実に目をつむることに慣れてしまわないように。





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Comments

アジアから帰ってくると買い物をする時に本当に必要か?もっと安いのがあるんじゃないか?贅沢ではないか?って考えることが増えた。でも日本で生きてくには必要とか言い訳して買ってる。そして今は言い訳すらしてない。

ボランティアや寄付や慈善活動だけが他人の役に立ってるわけじゃない。
人にはそれぞれの役割がある。
みんなが、それぞれ自分自信のココロの声に正直にやるべきことを一生懸命やればいい。
「LOVE&FREE」(高橋歩著)

でも上の高橋歩の言葉を聞いてから問題に目を向けることから始めてもいいのかなと思ったよ。俺に出来ることから。

長々コメントごめんね。
アスカのブログは色々感じるよ。
  • たかし
  • 2005/05/23 1:47 PM
>たかし
コメントありがとね☆
長いコメントもすっごくうれしいよん。
高橋歩の本はわたしも読んだよー。
そして、『人にはそれぞれの役割がある』ってとこ
わたしも感じた!!
彼はすてきだねぇ。
もう少しで就活終わるから、したら連絡するね〜
  • asuka
  • 2005/05/25 12:00 AM
グアテマラ行ったとき、あすかのマニラみたいな経験した。
白人ばかり住む高級住宅街から数百メートルしか離れてないところで、原住民たちがテント張り巡らして地べたで物売って、道もタクシーやら人やらごっちゃごちゃで、壊れた家もいっぱいあった。子供たちも働いてた。まさに混沌だった。悲しくもなった。
でも、私はその時「混沌」のいい面を見てあげる、そういう人たちの生活を肯定してあげることも大事だと思った。

勿論その生活の差に衝撃を感じて、こういう現状があるってことを多くの人が知るべきだって思いもあるけど、反面彼らには彼らなりの生活があって、混沌の中でしか見出せない、綺麗で整然とした暮らしをしている人にはわからない幸せとかもあると思う

そういう世界もあるんだって知っても、同情するのは失礼なことだよな〜って思った。私はまだまだ自分基準に物を見ちゃう。だから、「私たちは私たちの内面を世界全体に投影し、同じ色に塗り込めた。」っていう言葉は凄く心に響いたよ。




  • 2005/05/26 1:07 AM
>わかな
うんうん、すごく考えさせられるコメントありがと〜。ほんとうれしい。
確かに彼らには彼らの幸せがあるんだよね。
わたしもゴミ捨て場行ったとき、ちっちゃい女の子が「わたしは家族と一緒にいるから幸せ」って言ったとき、最初すごく混乱したけど、よく考えたら、精神的な部分ではわたしよりこの子のがずっと豊かなんじゃないかなって感じた。
確かに無条件に同情するのってすごく失礼な事だよね。
でも、そういう環境にいて、彼らには彼らの幸せがあると同時に、困難な部分もきっとあるはずなんだよね。
わたしが行ったゴミ捨て場でもそうだった。ゴミ捨て場っていう環境にいることによって障害児も多いんだって。あと、教育の面とかね。
だから、ただ肯定するだけじゃなくて、彼らはどんな生活をしていて、どんな考え方を持っていて、どんなことに幸せを感じていて、どの部分では苦しんでいるのかな?ってのをできるだけいっぱい理解できたらいいなぁと思う。
すごく難しいことだけど。
インドかペルーかわからないけど、旅に行く前にふたりでいっぱい勉強してこうねー。
  • asuka
  • 2005/05/28 1:52 AM
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リリイ・シュシュのすべて


そりゃあたしだって使うよ!稲森いずみのシャンプー♪(笑)天邪鬼なあたしの悪いところは色々勘ぐりながら観てしまう。きっともっと素直に観ていたらそれ程複雑ではなかったのかな?てなわけで2回観た。といっても2回目は重要そうなシーン以外は跳ばし跳ばしで…。そし

  • アンチ・ハレルヤ♪
  • 2005/06/18 5:26 PM

沖縄・ゲストハウス


沖縄のゲストハウスの情報、沖縄のゲストハウス、賃貸マンション、ルームシェア、短期滞在型、マンスリーマンション、レンタカー。観光、リゾートホテル。

  • 沖縄・ゲストハウス
  • 2006/11/15 3:50 PM
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